
大阪・北新地で60年。齡91歳という店主の角島輝子(つのしまてるこ)さんが、今日も元気に切り盛りするのがむかしのおふくろの味の店 『大輝(たいき)』だ。
カウンターの上には山脈のように料理が積み上げられ、さらに冷蔵庫内にもお造りなどが保管され、頼めばハンバーグやカレーまで出てくる。少なくとも50種類はある料理はすべて角島さんの手づくり。朝7時頃から仕込みに入り、開店の17時寸前までつくり続ける。しかも、提供するときは盛り付けておしまいではなく、料理に合わせてひと手間加える。例えば「牛すじ煮」ならあらかじめ煮込んでおいた牛すじに別に炊いておいたネギを加えて火にかけ、アツアツのものを食べてもらう。営業中はお客様と軽妙な会話を交わしながら、それをこなしてしまうのだ。
「働くことが元気の秘訣」と笑う角島さん。料理や酒もさることながら、この店を訪れるお客様は、角島さんの元気さを味わいに来ているのである。
コロコロと転がりそうな丸いグラスに氷とすだちがたっぷり。見た目も楽しい名物ドリンクが「ころころ」。『大輝』ののれんとほぼ同じ歴史を持つロングセラー商品だ。当初提供していたレモンスライスを使った「ころころ」は根強いファンがいることから、現在も提供している。

『大輝』に来たらこれを飲まねば、といわれる名物ドリンクが「ころころ」だ。氷をいっぱいに詰めた底面の丸いスインググラスに「麦焼酎 かのか」を注ぎ、スライスしたすだちをグラスの内側に貼りつけるように入れる。さらにすだちの搾り汁を加え、スインググラスごと木製のボウルにのせて提供される。
「ころころ」が生まれたのは角島さんが新地で店を始めた直後だから、60年近く前になる。当時まだ珍しかったスインググラスと出合ったことが誕生のきっかけだ。
「グラスを紹介してくれたお客様が、これに合うドリンクを考えてと言ったのです。それで金魚鉢みたいだから、氷をいっぱい入れて焼酎を入れてみようと思って。芋(焼酎)も試したけれど、クセがあるので麦焼酎にして、飲みやすいようにレモンスライスを加えました」(角島さん)
最初はレモンだったが、その後さまざまな柑橘類で試してみて、最終的に落ち着いたのが徳島県産のすだち。1杯当たりにすだち5個程度を使用することで、さわやかな香りと酸味を楽しめるドリンクに仕上げている。
このドリンクが人気になったのは、演出とネーミングの妙にある。「ころころ」と名付けたのは丸底のグラスがボウルの中で揺れる様から。たっぷりの氷をすだちがグリーンに彩り、それが焼酎の中に浮かぶというビジュアルも美しい。それでいて、「ころころ」というかわいらしいネーミングだからこそ、お客様の印象に残る。また、周囲のお客様も、注文を耳にし、提供されたものを目にすれば、自分も頼んでみようという気になる。人気のドリンクは味だけでなく、見た目や名称も優れているのである。
木製のボウルにスインググラスをセットし氷屋さんから仕入れたこだわりの氷をグラスに詰め、「麦焼酎 かのか」を注ぐ。すだちのスライスを氷とグラスの間にていねいに入れていく。最後にすだちの果汁を搾り入れる。1杯で約5個のすだちを使用。

『大輝』にメニュー表はない。カウンター上に山積みされた総菜類がそのままメニュー代わりであり、お客様はそれを告げるだけ。もちろん、冷蔵庫で管理しているものは、角島さんと長年角島さんをサポートする瀬戸周(せとめぐる)さんが教えてくれる。
ただ、初めて訪れたお客様は、注文した料理が出てきたときにまた驚く。1人前とは思えぬボリュームなのである。
「私らの世代は戦争などで食うや食わずの生活を経験しているから、お客様にはいろいろな料理をお腹いっぱい食べてもらいたい」というのが角島さんの考え。会計は基本的に食べ飲み放題で5000〜6000円。腹がはち切れるほど食べても1人当たりの金額は分かっているから、安心して飲み食いすることができる。
「ああ、お腹いっぱい!」と満足そうなお客様には、さらにデザートも振る舞うなど、ダメ押しのサービスが待っている。これで誰もが『大輝』のファンになってしまうのだ。
@早朝から開店直前までつくり続けた品々。お客様はここから好きなものを選ぶ。
A「お煮しめ」。昆布だしでしっかり炊き上げた煮物。野菜の料理を多めにそろえているのはお客様の健康面を考えて。
B「牛すじ煮」に相性抜群のビールはびんのみ提供。あえて氷水で冷やしているのもこだわりのひとつだ。
C「ポテトサラダ」は毎日仕込む定番商品。

角島 輝子さん
1923年生まれ。石川県金沢市出身。戦後、加賀友禅の卸問屋に奉公し、反物の見本を大阪の呉服問屋に届ける仕事を経験。その後、取引先が所有していた新地のおでんの店を譲り受け、約60年前に『大輝』を開業。2度の移転を経て、2003年から現在の場所で営業を開始。
●TEL 06-6341-5450
●営業時間 17:00〜24:00
●定休日 日曜日
●席数 1F:12席 2F:12〜13名(座敷)
★主要客層 30〜40代のビジネスマン
★客単価 5,000円
★来店動機 日常的
【人気ベスト3メニュー】
1位 ポテトサラダ
2位 牛すじ煮
3位 伊勢地鶏のたまご(ゆで卵)
【ドリンクメニュー】
アサヒスーパードライ(大びん)
ころころ(すだち)
ころころ(レモン)
その他 日本酒、焼酎など
※掲載されている金額はすべて税込み価格です。
※掲載のグラスについては、当社取扱いのものではありません。 ※掲載されている金額は掲載当時の価格です。